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底なし沼の恐怖 FX含み損地獄 第14話
豪ドル87円で損切りのサインが場帖から出ていながら実こうしなかったキヨプー。当然の如く天罰が下る。
含み損は人を狂わせる
相場運用において一番注意すべき重要事項の1つは「耐えられないほどの含み損を絶対に抱えてはいけない」ことだ。
- 損切りを何度もやって頭がおかしくなった人はまずいない。
- しかし、損切りをせずに許容量以上の含み損を抱え込んでおかしくなった人は沢山いる。
言うまでもないことだが、大きな含み損というのは人間に非常に大きなプレッシャーを与え続ける。そして、人間にはそれぞれ「耐えられる含み損レベル」のようなものがある。
- プレッシャーに強く含み損がかなり膨らんでも耐えられる人
- プレッシャーに弱く含み損が膨らんでいくと耐えられなくなる人
キヨプーは、大学を卒業してから証券会社の営業として3年ほど働いていた。当時は株の大暴落相場の真っ最中でもあったため、その惨劇の多くを実際にみてきた。
- 数日でボケてしまった人
- 一晩で黒髪のほとんどが白髪になってしまった人
- 大人しくて謙虚だった性格が、荒々しく攻撃的になった人
夜逃げや自己破産をしてしまう人は稀だったが、会社を潰したり離婚までいってしまうケースは何度も見たし聞いた。その多くが含み損を抱え込み、苦しんで苦しんだ末におかしくなったのだった。
最後には、手持ち資金がほとんどなくなるか借金で穴埋めした挙句に決済して資産がほとんど無くなってしまう。
そんな悲劇を何度もみてきた。
FXでも状況はかなり似ている。
でも、当時のキヨプーにはその危機感が薄かった
キヨプー:(*^。^*)
まあ、僕は今までいろんな人の悲劇から学んでいるからね。それにリスク管理だって万全だ。レバレッジを高くしたポジションは持っていないから大丈夫さ。例え、豪ドルが60円台になっても耐えてみせる。
当時のメルマガでもこれに近いことを書いていたと思う。
キヨプー自身、過去に商品先物相場で苦労して這い上がってきた経験がある。その時の状況に比べれば、この超円高相場での豪ドル大暴落など小さな出来事のように感じていた。
「俺は、大丈夫」
そんな自信があった。
キヨプーは、自分の事をきっちりと理解してリスク管理をしているつもりでいたのだ。
しかし、人間はえてして自分の事が一番わかっていない。
行動経済学によれば、人間は誰もが「自分は平均よりはちょっとは優秀」と考える傾向があるのだという。即ち「自分に甘い」という傾向がある。
当時のキヨプーも「自分をわかっていない1人」であった。
それを証明するような事件が起きた
あるはずのない出来事
豪ドルが70円台前半に突入しでもキヨプーは平気を装っていた。
キヨプー:まあ大丈夫だろ。平気平気。
それがやせ我慢だというのはすぐに明らかになる。
数日経ってから、キヨプーは隣町の某メガ銀行の支店にお金を引き出しに行った。ちなみに、キヨプーの住む町にメガ銀行支店はない。ATMでお金を引き出した後に、異変に気づく。
キヨプー:(・_・;) あれ? 車のカギがない?
ない?
ないぞ?
支店内を探し回るが見当たらない。
キヨプー:\(◎o◎)/! ど、どうしよう。
いつもは右ポケットに入っているはずの車のキーがない。駐車場から来る間に落としたかもしれないと思って、探しながら駐車場まで戻った。
キヨプー:(・_・;) あれ?
車にエンジンがかかったままだ。
\(◎o◎)/! な、なんで、こんな事しているの!!?
一瞬何が起きたかわからない。普段、キヨプーは車にエンジンをかけたまま歯なれる事はない。車の運転を始めて20年近く、一度もそういう事をした事はないのだ。
しばらく、車の中でボーゼンとしていた。
原因は・・・・・すぐわかった。
キヨプー:含み損か・・・本当は、あれが気になってしょうがないんだ。
- もしも駐車場じゃなくて、他の場所だったらどうなったんだ。
- 運転中も気がそぞろだったに違いない。通行者をひいたりするかもしれなかった。
- 誰かが盗もうとしたら簡単に盗めた。
いろんな意味で本当に危なかった。
FXの含み損が原因で自分の人生を終わらせてしまうかもしれなかった。大げさと思うかもしれないが、その時のキヨプーは「注意力が散漫で自分が何をやっているかわからない状況」だった。
含み損を気にしながら、信号機を曲がって通行者に気づかずに・・・ドカン・・・という可能性などは否定できない。
この時ほど、大きな含み損の弊害を思い知った事はない。
人間は、他人の事はよくみえていても自分の事は案外わからない。この時のキヨプーもそうだった。膨らみ続けるFXの含み損が自分の心にどれだけ大きな影響を与えているのかに気づいていなかったのだ。
キヨプーは、その日に放置ポジションの一部を損切りした。決済したポジションはどれも数年放置していたため、スワップ金利がかなり貯まっていた。そのため、損切りの額自体はそれほど大きなものではなかった。
キヨプー:一息、ついたかな。
ポジションを大きく減らしたことで、体の中から黒く重いものが抜けていくような感覚があった。これで暴落は終わったかもしれないという気もしていた。
しかし、相場は非常だった。
あっという間に豪ドルは60円台に突入する。
最悪の事態は回避できたという安心感はあるが、まだ辛い相場が続いていた。
どこまで暴落するんだ。
底無し沼・・・のようだ。
この頃のキヨプーには、光が見えなかった。
キヨプーは底無し沼の底の底に向かって落ちていった。
次回へ続く